ベルリンから人生敗者復活戦。

ワーキングホリデーの失敗談を綴る。その失敗の過程と、失敗から出直す、敗者復活戦の過程も勝手に配信する。

日本公開5月25日ウェス・アンダーソン監督最新作「犬ヶ島」ベルリンの先行上映会をレポート:製作現場の裏側についても聞いてきちゃいました!

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日本を舞台にしたストップモーション映画として話題のウェス・アンダーソン監督の最新作「犬ヶ島」の日本公開は5月25日。第64回ベルリン国際映画祭にて「グランド・ブタペスト・ホテル」で銀熊賞を獲得した同監督。今年の映画祭では今作でオープニング上映作品に選ばれ、またしても銀熊賞に輝きました!ドイツ公開は5月10日ですが、一足お先にスニークピーク上映会にお邪魔してきました。上映会の様子と、映画の魅力をお伝えします。

目次

 

ストーリー「政治的圧力にも屈せずに愛犬を探す旅に出た少年の物語」

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あらすじ

今から20年後の日本。メガ崎市ではドッグ病が蔓延し、人間への感染を恐れた小林市長が、すべての犬を“犬ヶ島”に追放すると宣言する。
数か月後、犬ヶ島では、怒りと悲しみと空腹を抱えた犬たちがさまよっていた。その中に、ひときわ大きな5匹のグループがいる。かつては快適な家の中で飼われていたレックス、22本のドッグフードのCMに出演したキング、高校野球で最強チームのマスコットだったボス、健康管理に気を使ってくれる飼い主の愛犬だったデュークだ。そんな元ペットの4匹に、強く生きろと喝を入れるのが、ノラ犬だったチーフだ。
ある時、一人の少年が小型飛行機で島に降り立つ。彼の名はアタリ、護衛犬だったスポッツを捜しに来た小林市長の養子だ。事故で両親を亡くしてひとりぼっちになり、遠縁の小林市長に引き取られた12歳のアタリに

とって、スポッツだけが心を許せる親友だった。
スポッツは鍵のかかったオリから出られずに死んでしまったと思われたが、それは“犬”違いだった。何としてもスポッツを救い出すと決意するアタリに感動したレックスは、伝説の予言犬ジュピターとオラクルを訪ねて、教えを請おうと提案する。
一方、メガ崎市では、小林政権を批判し、ドッグ病の治療薬を研究していた渡辺教授が軟禁される。メガ崎高校新聞部のヒロシ編集員と留学生のウォーカーは、背後に潜む陰謀をかぎつけ調査を始める。
アタリと5匹は、予言犬の「旅を続けよ」という言葉に従うが、思わぬアクシデントから、アタリとチーフが仲間からはぐれてしまう。少しずつ心を通い合わせ始める一人と一匹に、さらなる冒険が待っていた─。

 公式サイトより:STORY|映画『犬ヶ島』 公式サイト

製作の裏側もチラリ。スニークピーク上映会@ベルリン

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ドイツ公開の5日前、ベルリンのZoo駅近くのYorkシネマにてスニークピーク上映会に出掛けてきました。今回はとても不思議なご縁で御誘い頂き、実際に映画のセットを作り上げた製作チームと鑑賞するという幸運に恵まれました!

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まずはスタッフ代表の方が製作時のエピソードを交えつつ挨拶。今作はベルリンで映画のセットの一部が製作され、セットは撮影が行われるロンドンまで送られたとのこと。ミニチュア製作に関わったスタジオの皆さんに向けて、娘さんを抱っこした監督からのメッセージが特別に上映されると会場からは歓声が!

監督「今、僕たちはどこにいるんだっけ?」

娘さん「うーん、メガ崎!(*映画の舞台とされている架空の都市)」

空気も読める聡明な娘さんと共に、製作スタッフを労うとても素敵なメッセージでした。

映画制作裏側: 助成金制度と好循環

今作品はアメリカとドイツの合作。ウェス・アンダーソン監督はドイツから助成金を受けているとのことで、助成金を受けた人は制作の一部をドイツで行なってドイツに還元するようになっているとのこと。このような助成金制度があると、ドイツ国内の技術が伸び、またコネクションも広がり、ドイツのクリエイターが育つ好循環になりますね。日本では助成金制度があまり充実していないと聞きました。このような制度は是非とも検討して欲しいですね。 

日本人だからこそ贅沢に細部まで味わいつくせる世界観

スニークピーク上映会ではオリジナル言語で上映されました。この映画のコンセプトは「犬は英語で話すけれども、それ以外の人物は本人の言語で話すことが基本」とのことで、ドイツ語字幕がかかるのですが、全てを翻訳しすぎないバランスが面白かったですね。また外国人留学生を登場させるなど「英語で話すキャラクターが自然といる」演出も自然で良かったです。日本で鑑賞される方へも字幕版での鑑賞をお勧めしたいですね。言語の入り乱れるバランスを楽しんでください。また壁の落書きや様々な文化の描写など、日本関連の小ネタが多いので日本人はより細部まで味わうことができます。特に最初の五分の導入部は、日本の神話を感じさせる不思議な世界観に引き込まれ、一気にストーリーに入り込めるでしょう。

ストップモーションアニメーションとは?

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ストップモーションアニメーションとはイラストで映画を作り上げていくアニメーションと異なり、人形をセットの中で実際に少しずつ動かしながら一コマづつ撮影する手法のこと。人形も主要キャラクターに関しては何体もサイズが異なる人形を用意したり、表情に関しては何十パターンも用意したりと気の遠くなるような作業が山盛り!メイキング映像ではどのように人形が作られていったのか、どれほどの人形を用意したのか製作の裏側が紹介されています。3Dプリンターが活躍し始めていますが、この映画の人形は全てが手作業で作られています!犬たちの毛も全部手作業で埋め込まれているとのこと。人形とセットを作り上げてから、アニメーションチームが映像を作り上げていったとのことです。

映画を見てみると、人形の動きがとてもリアルなことに驚くのですが、特に驚いたのは犬の毛がまるで生きているかのように動いていたこと!上映後に「セットに扇風機を置いて、リアルな毛の動きを出したんですか?」と質問すると、「ストップモーションアニメだと人形を何度も触るから、その時に自然と毛並みが動くのよ。だから毛までリアルな動きを感じてもらえるの。」と教えてもらえました。実際のセットで撮影された映像はとても美しく、ゴミの家に差し込む光が綺麗で、映像そのものも見どころの一つですよ。リアルではないけれど人形がリアルだからとてもリアル。涙の描写に是非注目してくださいね!

ウェス・アンダーソン監督の深い日本映画への愛とオマージュ

ベルリン国際映画祭のプレスインタビューにて何故日本を舞台にしたのか、監督自らが語っていました。

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「このプトジェクトはそもそも、ゴミ捨て場に放置された犬に関するストーリーってアイディアから始まったんだ。そして長年にわたって日本を舞台にした映画を作りたいね、って話してもきてもいたんだ。日本映画、特に黒澤映画への愛を表現したいよね、って思っていて。このストーリーはどこを舞台にしてもいいって分かっていたから、現実の日本を少しファンシーにした街を舞台に選んだんだよ。(0:20~1:00)」

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特に黒澤映画への愛を表現したかったとのことですが、この英語記事では詳しくどの黒澤作品がオマージュに使われていたかを説明してくれています。例えばゴミ島の最初のシーンで5匹対5匹の犬たちが、それぞれのグループで対立しながら食品廃棄物が入った袋を巡って戦いますが、このシーンの雰囲気は「七人の侍」ですね。また主人公アタリが子供らしく滑り台で遊ぶシーンがありましたが、この時に出てくる「身長制限」のイラスト侍の衣装、このカラフルな衣装はアカデミー賞衣装デザイン賞も獲得した黒澤映画「乱」を彷彿とさせます。下記の記事では言及されていませんが、一緒に鑑賞した友人は「犬隔離政策を推し進めた小林市長の風貌が『生きる』の主人公に似ている」とも言っていました。映画を鑑賞しながら、ウェス・アンダーソン監督の日本映画愛を探してみるのも面白いでしょう。

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こちらのインタビューでは黒澤監督以外にも「宮崎映画の影響も受けているし、浮世絵師として北斎と広重の作品からインスピレーションを受けた」と語っています。これだけの深い日本愛があるウェス・アンダーソン監督ですから、日本人が鑑賞すると「ああ、ここまで日本文化をスタイリッシュに散りばめてくれたのか」と嬉しくなります。特に「乾杯!」のシーンはちょっとファニーでつい真似したくなる演出でした。

 

「え!?この人も参加してたの!?」日本人キャストが豪華です!

そして今作はボイスキャストがとっても豪華です!ビル・マーレイにスカーレット・ヨハンソン、エドワード・ノートンにティルダ・スィントンとハリウッド勢もすごいのですが、映画のエンドロールで流れる日本人キャストにも驚いちゃいます。公式サイトなどで発表されている日本人キャストはRADWIMPS・野田洋次郎、夏木マリ、村上虹郎、渡辺謙さんなどの名前がありますが、「え?この人も?どこで!?」と思うような俳優さんまで出ていたんですね。一人ネタバレすると、山⚪︎孝之さんの名前もありましたが、一体どこで登場していたんだろう?オノ・ヨーコさんは分かりやすいぐらい明らかに「オノ・ヨーコ」で登場されていたりと、声で俳優さんを想像するのも楽しい映画です。

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因みに気になる主人公の男の子ですが、彼はKoyu Rankinくんと言ってカナダと日本のハーフの少年。今作が長編映画デビューだとのこと。上記のメイキング映像で彼が主人公アタリの人形を作りに挑戦しています。演出の一部かもしれませんが、彼の少しクセのある日本語がメガ崎シティーの世界観にとてもマッチしていましたね。

 

映画公開前にウェス・アンダーソン監督作品を予習しよう!

日本公開まで時間がありますから、是非とも予習をしておきましょう!特にお勧めの映画は2つ。

絶賛されたストップモーションアニメーション作品「ファンタスティックMr.Fox

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作業量と製作期間の長さがネックとなるストップモーションアニメーション。構想10年、製作期間2年を経て完成された今作は、ウェス・アンダーソン監督の初アニメ作品でした。

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第64回ベルリナーレで銀熊賞を獲得した「グランド・ブタペスト・ホテル」 

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今作はウェス・アンダーソン監督が脚本も書き上げ、アカデミー賞でも4部門受賞を果たした傑作コメディー。日本公開時もかなり話題となり、この映画の名前は聞いたことがある人も多いかと思います。

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今年の映画祭で話題になっていたけれども、チケットとスケジュールの関係から見られないままだった「犬ヶ島」をこのような機会に見ることができてとても嬉しかったですね。アニメーション作品ではありますが、子供向けというよりも大人向けの映画ですよ!監督の深い日本愛が日本の観客までバッチリ届きますように。