ベルリンから人生敗者復活戦。

ワーキングホリデーの失敗談を綴る。その失敗の過程と、失敗から出直す、敗者復活戦の過程も勝手に配信する。

2018年ベルリン国際映画祭コンペティション部門レポート「EVA」「Museo」「Transit」—受賞結果のまとめ

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目次

 

受賞結果

ベルリン国際映画祭がついに終わりましたね。コンペティション部門の結果も出ました。今回は日本関連作品で賞レースに入るものはなかったですが、パノラマ部門のオープニング作品となった「リバーズ・エッジ」がパノラマ部門で国際批評家連盟賞を受賞されました。コンペティション部門の受賞結果は下記です。

 コンペティション部門受賞結果

 ー金熊賞:

「Touch me not」アディナ・ピンティリエ監督(ルーマニア)

 ー銀熊賞 審査員グランプリ:

「Mug」マウゴジャタ・シュモフスカ監督(ポーランド)

 ー銀熊賞 監督賞:

「犬ヶ島」ウェス・アンダーソン監督(米国)

 

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ベルリン国際映画祭での「Touch me not」の監督のプレス・コンフェレンス映像はこちらから。監督の考えや俳優陣のコメントを知ることができます。

「私は20歳の時には既に”Intimacy親密さ”や”Love愛”が何なのか分かっていたと思う。その後20年経ってたら、何もわかってなかったと気づいて、もう一度”Intimacy”について学び始めたの。」

Touch me notは「触れられることが苦手」という繊細な内容で実は気になっていたのですが「映像が生々しくて苦手」と友人に断られて見送ってしまいました。うーん、見ておけばよかった!コンペティション部門では受賞した上記の3作品は観に行けていないのですが、ノミネート作品19作品のうち「EVA」「Museo」「Transit」3作品を観に行けましたので、簡略的に感想をまとめていきます。こちら三作が日本で公開される際には参考にしてみて下さい。

 

-EVA :才能を現実で補充しようとして破滅した“泥”の脚本家と女達

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⑴基本情報

監督:Benoît Jacquot ブノワ・ジャコ

主演:Gaspard Ulliel ギャスパー・ウリエル

   Gaspard Ulliel イザベル・ユペール 

ストーリー

物語の主人公は若いジゴロのベルトランド、彼は死んでしまったクライアントから脚本を盗む。一年後、彼は脚本家として成功を収めており、パリの一等地にアパートも構えた。彼のプロヂューサーのレギスが次の脚本はまだかと急かしてくるのが頭痛の種で、どうにかして何かを書き上げなくてはならなくなった。ベルトランドが彼のヒット作となった舞台のリハーサルに顔を出すと、そこでハイクラスの娼婦、エバと出会う。エバに強烈に創作意欲を刺激されたベルトランドは、彼女のと現実のやり取りをストーリーに仕立てようと必死になるのだが。

参考:Eva (2018) - IMDb

⑵ログライン

「才能がないまま盗作で一躍有名作家になった男が苦悩しながら現実で出会った娼婦をベースに次回作を書き上げようと躍起になる」という話。 

⑶勝手な感想

私にとってはギャスパー・ウリエルが観たいが為の映画。イブ・サン・ローランでのキラキラ繊細儚い感じがツボで「このフランス人俳優のえくぼがすごい!」と感激した俳優さん。(マニアックなツボ)

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予想通りギャスパーが美しくて画面がキラッキラッしとる映画でした!また更にフランスの国民的女優イザベル・ユペールも終始美しく、恋人役の若い女優さんより美しく見えちゃうんだから、女性の美は何とも不思議ですね。 

お話としては才能の有無、という苦悩はもちろんですが、この映画では若さと老い、美醜がはっきりした物語でもありました。老いた男から性的なサービスを金で強要されたり、若い彼女がいても年上のエバに魅了されたり。主人公は脚本を書くためにネタを求めて、街と郊外、若い女と壮年の女性の間を新幹線で行き来しますが、その慌てっぷりがドンドン余裕をなくしていくのですね。「結局書き上げることはできるのか?」という期待よりも、「こんな無茶がいつ破滅に繋がるのか」というヒヤヒヤする映画でした。フランス映画らしく画面が常に綺麗で登場人物も優雅です。人間の欲も存分いでているのですが、それでも何故かギラギラしてこないのはフランス映画のなせる技でしょうか?静かに美しく狂っていく、そんな美学を感じる作品が好きな方にオススメです。

—Transit:ビザと経由地パスを軸に展開する人々の苦悩と決断

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⑴基本情報

監督:Christian Petzold クリスチャン・ペツォールト

主演:Franz Rogowski, フランツ・ロゴヴスキ

ストーリー

ナチ捜査の後でフランスまで逃げてきた男は、自殺した作家の個人情報によって通行許可証を手にする。マルセイユに足止めを食らうも、そこでは夫を必死で探し続ける美しい女性がいた。そう、彼女は彼が手にした個人情報の持ち主、あの作家の妻であった。

参考:Transit (2018) - IMDb

⑵ログライン

「戦時中のドイツからフランスまで逃亡したゲオルグは、ドイツで預かった自殺した作家のIDによって予期せずメキシコまでの通行許可書を手にするが、同時に街で出会った美しい女が彼のなりすます男の妻であると知って、彼女を生かす道を考え苦悩する」という話。

⑶勝手な感想

この映画は今の難民問題を抱えているドイツで見たらグッとくるかな?と思ってあえて難民を扱っている映画が見たくて選びました。また6年もベルリンに住んでいるにも関わらず、かつ結構な映画好きなのに未だにベルリナーレ未参加のドイツ人彼氏を連れて行くこうと思い、ドイツ人監督でほぼドイツ語の映画がいいかと思って無難にコンペティション部門からチョイス。最終日のパブリックデーで会場は開場30分以上前から長蛇の列、そしてすぐに満席!受賞は逃しましたが、ドイツ人監督の作品であるからか注目度は高かったようです。濃厚なストーリーと流れる展開で最後まで飽きさせず、また詩的な台詞回しなど、上映後は自然と客席から拍手が湧き上がりましたね。

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(*シベリア寒波到来で極寒の冬空の中30分並んだのは良い思い出にするしかない。)

お話としては少しサスペンスな部分はありながらも、「亡命する人々の思惑と事情」が様々な場面で交差するストーリーです。このタイトルのTransitとは「中継地」という意味なのですが、ドイツからメキシコに亡命するにしても、まずはフランスに逃げて、そこからも直行便がないからどこかで中継してから旅立たなければならない。そのためにはお金だけではなく、各大使館を訪ね歩いて各国から許可をもらわなければならないのですが、もうコネやツテ、また準備をしていないとなかなか通らない。亡命しようとしている人々は手続きのために長蛇の列で待たされるのですが、「私には語るべきストーリーがあるし、人はそれを聞くべきだ」とも言わんばかりに自分の話をベラベラ語ろうとする人がいる、という描写はリアルでした。皆が一様に苦しく、耐えているときにでも自分が!自分が!となる人。うんざりとしながら話に付き合わされる人、付き合いきれずに場所を移る人。この部分は様々な移民、難民が入り乱れる現在のベルリンであっても、ジョブ・センターとか語学学校とか、皆が等しく必死になる部分で強調されて現れていると思います。

ラストの展開はかなり「え!」と思わされますし、その後の意味深なラストシーンも観客たちに「え〜、どっち?」と思わせる、なんとも上手に余韻を残す映画でした。これはエンターテイメントというよりも、素晴らしい文学を映像で見せてもらった、と感じる映画でしたね。ゆったりとした週末に、用事もすべて済ました日曜日とかの午後に、さらりと一人で映画館に出かけてしんみり鑑賞したいタイプの映画。文学的なご友人との鑑賞は、その後の余韻のままにコーヒートークが弾むかと。

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最後に、主演のフランツ・ロゴヴスキは「ヴィクトリア」という早朝のベルリンにて長回しで(というかワンカットで)撮影し続けた異色の映画にも出演していますので、その後DVDレンタルで彼の他作品をチェックしながらベルリンの町並みを見るのも面白いですよ。予告編はこちらから。

ーMuseo:平凡から非凡に飛躍してそのまま着地できない

www.critic.de

*このドイツ語のサイトで映画の一部映像が観てもらえます。

⑴基本情報

監督:Alonso Ruizpalacios アロンソ・ルイスパラシオ

主演:Gael García Bernal ガエル・ガルシア・ベルナル

ストーリー

1985年、メキシコ・シティー。セキュリーティーをかいくぐり国立人類学博物館から140点にも及ぶ美術品を盗み出した男の転落。

参考:Museo (2018) - IMDb

⑵ログライン

「平凡な生き方に嫌気がさしていた青年フアンは、嫌がる友人を連れてメキシコ国立人類学博物館の秘宝を奪うも、あまりの価値の高さに売り払えないことが分かると自分のしでかした誤ちの大きさにパニックを起こして行く」という話。 

⑶勝手な感想

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(*この時の映画館はKino International。Alexander広場から歩いて10分ぐらいです。)

この映画では主人公がじわじわと実感していく「罪の意識」、また彼を取り巻く人々が根底に抱えて隠してきた「罪の意識」その二つが表面化してくるストーリーが面白かったですね。実際にベルリン国際映画祭で脚本賞を取っているだけあって、主人公のヤンチャぶりと転落、それだけに収まらずに主人公を取り巻く人々の過去が明らかになるたびに物語に深みが増します。例えば、今は医者として成功している威厳のある父親が、実は親族でつまみものにされている叔父に、過去に犯した誤ちを尻拭いしてもらっていたり。後ろ黒い過去がある人間が、現在の人間の罪を糾弾するのは見ていて具合が悪くなりましたね。

またメキシコ映画らしいというか、ハチャメチャな人間模様もとても面白かったです。とにかく人とのつながりが濃い。家族との食事のシーンなんて、小さな揉め事がまるで誰かが殺されたかのような騒ぎ立て方。家族間でも言葉遣いが悪すぎる「クソ」なんて可愛いもので、神経質な女性に「なんだお前、生理の匂いがするぜ」だなんて、ものすごい言い返し方ですよね。特に主人公の口が悪いのですが、だんだん愛着が湧いてくる不思議なキャラクターでした。彼は特に大きな理由もなく「何かデカイことをするんだ」という一心だけで、国宝とも言えるナショナル・ギャラリーの作品を盗んでしまうんですね。しかし国内外に大々的に犯罪行為が報道される上に、その作品の価値と知名度が高すぎて、ヤミ市場でも買い手がつかない。いわば「売り払えない秘宝」を無駄に奪ってきてしまったのです。「国の文化遺産、歴史そのものを奪った」として盗人が非難される中で、彼はことの大きさに動揺し、動揺しながらも振り切ったかの行動を取っていきます。作中で盗んできた金細工で子供達とビーチで砂遊びをしたり、酔ったまま国宝に酒を注いで飲んでみたりと、観客も「え〜!」な行動を連発。そんな行動から彼がいかに追い詰められていくかが表現され、また「そんな状況でそんなことしちゃうのって、やっぱりメキシコって感じだ」と日本人からしたら最早アッパレ。

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主演のガエル・ガルシア・ベルナウは大好きな俳優の一人で、彼の出演作品でオススメをあげたらキリがないのですが、「モター・サイクル・ダイアリーズ」とか、チェ・ゲバラの若い頃を演じていたりと、メキシコのみならずラテン・アメリカを代表する俳優です。英語も堪能で「バベル」などハリウッド作品にも多く出演しており、実はナタリー・ポートマンの元彼だったりね。そんな彼の一番の秀作はスペインの巨匠ペドロ・アドモバルが監督したゲイ映画「バッド・エデュケーション」だと思うのです。男臭いの美しい、摩訶不思議な映画です。

 

さて、この記事にてベルリナーレでの映画鑑賞レポートは終了します!次回は「今更!?」って感じですが、今年学んだオンラインチケットの買い方を忘れないうちにまとめておきまして、そしてベルリナーレ関連記事を一旦締めたいと思います。