ベルリンから人生敗者復活戦。

ワーキングホリデーの失敗談を綴る。その失敗の過程と、失敗から出直す、敗者復活戦の過程も勝手に配信する。

2018年ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・タレント特別ワークショップVariations「坂本龍一」という世界観にどっぷり浸って更に魅了される1時間半。

f:id:morianna:20180304024822j:plain

ベルリン国際映画祭で人気なのは、なにもプレミア上映の映画だけではないのです。「ベルリナーレ・タレント」と呼ばれるイベントでは映画ファンだけではなく映像、または映画業界に興味がある学生やアーティストたちに向けて、世界的な監督や製作側の方々が色んな話をしてくれる、というワークショップも人気です。昨年度は映画だけだったので、今年はワークショップも覗いてみました。だって、教授がベルリンに来られたから!

www.youtube.com

今年、ベルリナーレ・スペシャル部門でNYで行われた200人限定のコンサートを収めた映像作品が上映され、また映画祭の審査員も務めていた坂本龍一さんが、なんと「ベルリナーレ・タレント」にも登場したのです!Variationという企画で22日の17:00からHau1という劇場にてワークショップが開催されました。今日は当日の様子をレポートいたします。

目次

 

 ベルリナーレの会場や現地の様子について

⑴劇場の紹介

f:id:morianna:20180304024900j:plain

今回の会場はHAU1でした。最寄駅はSバーンのAnhalter駅じゃないかな?歩いて10分しないぐらい。バスだとM41系のWilly-Brandt-Hausかな?メイン会場のPotsdomer広場からも一駅ぐらいなのでそんなに遠くないですよ。

f:id:morianna:20180304024927j:plain

会場は煌びやかで、ちょっと小さなオペラハウスみたいな感じ?(オペラハウスをよく知らないけれども)300ぐらい入れる、二階建ての会場でした。

 

⑵チケットの入手度合い

f:id:morianna:20180304025028j:plain

実はこのチケット、直近でもチケットの入手ができました。

当初の予想では「教授だよ?坂本龍一がトークしてくれるんだよ?絶対に入手困難だよ!」と発売初日に息巻いてチケット入手した我々だったのですが、実際はチケット争奪戦はゆるい感じ。私の周りの方々が異常に教授が大好きすぎたのでしょうね。

 

⑶現地ファンの反応

「I love Sakamoto!」というイタリアン女子とチケット入手日から当日を心待ちにしていたのですが、会場に集まった人たちは全員「Mr.Sakamoto, I love you!」な感じで教授のファンばっかりでした。二階席まである、まるでコンサートホールのような会場でしたが開始時間を少しすぎても観客が入り続け、満員御礼でした。教授が登場しても、喋っても、とりあえず感激。観客側の「この人の話が聞きたい!」という一体感がすごくあったと思います。

 

当日の様子

*スケジュール*

⑴登場から30分ほど、Alva Noteさんと2人でいきなり冒頭から生演奏。

⑵その後インタビュアーも交えて、トーク。過去の作品について面白いお話しを聞ける。

⑶質疑応答:15分ぐらいしかなかったかな?

 

⑴冒頭いきなりからの演奏会。

f:id:morianna:20180304025053j:plain

ノイズのような、不協和音のような和音、神秘的な音の世界。まるで洞窟、深い山奥にひっそりと建つお寺を早朝に尋ねたかのような緊張感と静寂。お寺の雰囲気が私にはすごく合っていて、特に「真っ暗闇の境内を張り巡らされた数珠を辿って歩いていく」という京都で体験した「母体巡り」の感覚が呼び起こされました。胎児がお腹で聞くような音楽、というか。また、音響に合わせて波長が映像化されているので、どこか別世界に引き込まれていくような感覚も起こりました。「厳か」という形容詞がぴったりな演奏でした。

⑵教授がやたらとチャーミングなトークタイム

f:id:morianna:20180305201728j:plain
過去に手がけた映画音楽の作品に関して、実際に映画のワンシーンを見ながら教授の考え方、また考え方の変化などが聞けたのがとても面白かったですね。また教授が小気味良いテンポで話してくれる「あの映画」の裏話が聞けたのも良かった!下記にいくつかのエピソードを覚書しますね。(*一字一句コピーできているわけではないので、ニュアンスだけ感じて下さい。)

「ラスト・エンペラー製作陣は結構俺に無茶振りをしてきた。」

—プロドューサーのジェレミー・トーマスから突然連絡があったんだけど、それも「Come to Beijing next week(来週、北京に来てくれ)」みたいなDemanding(強引さ)なの! 「え、無理だよNYで仕事もあるし、コンサートとかレコーディングもあるからさ。」と答えても「Cancel them all! (全部ブッチしてくれ!)」って感じなのね。まあ、もちろん北京に行ったんだけど。(観客笑)

最初はさ、俳優での出演を頼まれていたからそのつもりで行ったのよ。でも、あっちについてから「ね、音楽も担当してくれよ」っていきなり言われるわけ。「え、作曲するにしても道具なんて持ってきていないし」って言ったら、「どうにかしてくれ」って言われたんだよね。まあ、どうにかしたんだけど。(観客笑う)

「最初は、映画音楽というよりも俺の音楽という感覚だった」

—(過去作品の映像を見せながらのトークで)映画の音楽を担当するようになって、最初は音楽家としてのエゴがあったんだ。「映画よりも俺の音楽が目立ってくれ!」ぐらいの気概があったしね。(観客笑う)でも今は、映画音楽は映画に溶け込んでこそだと思っているよ。

www.youtube.com

(レヴェナントの映像の後に)この映画では「映画の中に存在する自然音」にも気を巡らせて、そんな音も大切にするようになったんだ。

ーRe-enforcing what is already there.

すでに映像でストーリーがあるからね、そのストーリーを更に効果的にする役割を持つのが音楽でしょう。

ーDecoration

ストーリーに彩りを添える、それが映画音楽。

ー Result of 1+1=3

映像だけで完成しているのであれば、音楽はいらないじゃないか。音楽がいるならば、ただの1+1=2じゃなくて1+1=3ぐらいの効果にしたいと思うようになったよ。

  • Sound design(音楽をデザインする)という言葉も出して、いかに映像に溶け込ませるか、というお話をされていました。
  • Music Grammer (音楽の法則) にとらわれすぎていた時もあったけれども、いまはもっと自然になれている気がする、とも。
「デビットボーイとのキスシーンが一番美しい映像だった、と言われて困惑したね」

他にも「戦場のメリークリスマス」でのあのシーンについてだとか、はたまた学生時代に行ったデモ抗議活動とか、ガラスハウスで行った演奏についての話など、坂本龍一ファンであれば「あー!あの時の話か!」と嬉しくなる裏話がたくさん聞けました。

www.youtube.com

Alva Notoさんとのトークももちろんあり、「僕たちいつもぶっつけ本番だよね。リハーサルすらしていないもんね」という発言には流石に会場もビックリ。「Spontaneous(その場その場の思いつきで実行していく)わけだから、もう一度同じ演奏をしてって言われても無理だよ。」「今日の冒頭の演奏も、リハーサル無しでその場でやっているからね!」と笑顔で発言され、流石プロフェッショナル、というか「音楽そのものを楽しんでいる」感じがすごくしました。

www.youtube.com

ちなみに友人は「教授はすごいよ。だって『雨の音が聞きたい』って言って、バケツ被って雨の中に入っていくような人だから。」と言っておりましたが、その可愛らしい映像がこちらで少し見られますです。ホンマや、バケツ被ってはるわあ。

 

⑶質疑応答「国外に住む日本人として」

観客席から何人も手が上がった質疑応答ですが、その中に日本人の女性から「私の国外にずっと住んでいるのですが〜、で、日本に対してどのような考えをお持ちですか?」という質問がありました。(*この方の質問がめっちゃ長くて他にもいろいろ言われていたのですが、教授もザックリ「つまりMy view toward Japanね?」と聞いて答えていたので、質問の大義はここかと)

教授は「今の日本は本当にClosed(保守的・閉鎖的)でtight(息苦しい・堅苦しい) になってきちゃっているよね。昔、60’sや70’sはもっと自由で、まあアメリカナイズされていたって言われることもあるけど、でも自由でEasy going(気楽な雰囲気)だった。これは日本だけじゃなくて、世界全体的にClosedな風潮が出てきているよね。その点を僕は憂りょしています。」こんな感じで回答されていました。

他にも「若いアーティストと頻繁にコラボレーションされていますが、垣根はすごく低く持っているんですか?」など音楽に関する質問もありましたが、やっぱり海外だと政治っぽい質問も出るものなのか、と私は音楽と関わりのなかった質問に少し驚きました。これまた友人に話してみたところ「いや、教授は結構政治的な人なんだよ。音楽家であっても政治的発言は繰り返してきたし、地雷撤去の活動だったり、原発反対デモだったり、実際に行動にだって移してきているからね。そのことに関して教授の講演会とかでは政治的な質問はよく出ているよ。」と教えてくれました。うーん、友人の教授好きっぷりも凄いです。

ほとばしる情熱的なコメント

f:id:morianna:20180304025110j:plain
で、ここまでトークの内容や生演奏について書いておきながら鮮明に私の印象に残ったのは「教授のマイク両手持ち」です。もうね、腹が立つぐらいに教授がチャーミングなんですよね。マイクの持ち方が可愛いとか、英語で話すときの喋り方がゆっくりで可愛いとか。正直「え、このオジさん、やたらと可愛いんですけど、何コレ?」と動揺しました。また私は注意力散漫なので、「こんな世界的な音楽家の演奏をこの距離で生で聴けることなんてない!」と身構えすぎて逆に演奏に集中できなかったので、「あ〜、メガネめっちゃオシャレやなあ」と集中力が切れそうになったときは音楽に神経を集中させるように気をつけていました。しかし、公演後の友人達との雑談で「俺もそんなにずっと、集中できなかったよ。『あ〜、後ろの刈り上げ、めっちゃ綺麗だな。やっぱり二週間ごとぐらいに美容院行くのかな?』とか考えちゃったから」と言っていたので、距離が近すぎると演奏者の観察にも気が散るのは嬉しくもあり仕方ないことなのだな、と分かりました。うん、刈り上げも綺麗だった。まるでドラゴンボールのトランクスみたいだったよね!

余談:坂本龍一も小津安二郎がお好き!

「また2月17日には、彼がもっとも敬愛する監督である小津安二郎の、「東京暮色」4K修復版がクラシック部門で上映される際のプレゼンテーションを、同じく小津を師匠と仰ぐビム・ベンダースとともに務めた( 記事抜粋)」

えー!17日の上映でプレゼンテーションとかあったの!行けばよかった。。。ここまで激しく後悔する映画は他にないわ。「あの小津映画をスクリーンで見れるなんてなかなかない機会だから行ってみようかな、どうしようかな〜」と悩んで結局行かずじまいだったベルリナーレ・クラシック。教授どころか同じくクラシック部門で再上映された「ベルリン天使の歌」の監督、ヴェム・ヴェンダース氏まで来てコメントしていたなんて。小津監督作品好きなお二人が語ったプレゼンテーション、是非聞きたかったです。ベルリナーレって「映画を見に行こう」と思って出かけてみたら、実は舞台挨拶があったり質疑応答があったり、予期しないところで更に映画を楽しむ要素が出てくるのですよね。来年は「面白そう!」と思ったエネルギーをそのまま大切にしようと心に決めました。

eiga.com

 

俳優・坂本龍一を楽しむならこの二作「ラスト・エンペラー」「戦場のメリークリスマス」

www.youtube.com

坂本龍一さんの俳優としての映画出演作、見たことがあったのは「ラストエンペラー」のみだったので、図書館から「戦場のメリークリスマス」をすぐに借りて観ました。演技が上手とか下手というよりも、圧倒的な雰囲気がすごい。そして俳優の教授は、なんかエロい。色っぽい教授の演技が見たい方はこちら二作を是非ご覧ください。

www.youtube.com

時系列でいうと先に大島渚監督作品の「戦場のメリークリスマス」で俳優として、また映画音楽家として知られるようになり、その後に「ラストエンペラー」に繋がっています。プロデューサーのジェレミー・トーマスは「戦場のメリークリスマス」も手がけていましたから、その流れで「ラストエンペラー」にも坂本龍一さんを呼んだのでしょう。「戦場のメリークリスマス」では英国アカデミー賞で作曲賞を受賞しており、今回の「ラストエンペラー」ではアカデミー賞で作曲賞、オスカーを手にすることに。インタビューで「オスカーを受賞できて嬉しかったのは、受賞そのものよりも『今後は仕事を選べるな』と思えたことが嬉しかった」と言われていましたので、オスカーを手にしたことは教授のキャリアで転機になったのは間違く、その後沢山の映画音楽に関わるようになりましたね。

www.youtube.com

最近手がけた映画音楽の中に日本映画「怒り」があります。この映画はまず、映画として俳優さんもストーリーも本当に素晴らしいです。そこに坂本龍一さんの映画に溶け込む音楽、1+1=3を表している作品だと思います。俳優・坂本龍一を堪能された後は、もう一度音楽家坂本龍一をどうぞ。

素晴らしい映画音楽家のお話と演奏を堪能できる、贅沢な1時間半でした。