最近話題の「ブレード・ランナー」って何なの?SF映画だったっけ?
テレビでやたらと特集やCMを見るけど「名前だけは知っているけどな〜」って方のために全部まとめてみました!まずは簡単に「概要」「あらすじ」「影響」をおさらいしてみましょう。
—ブレード・ランナーのザックリとした解説
まず簡単に概要を説明すると、「ブレード・ランナー」は1982年に公開されたリドリー・スコット監督の映画です。舞台設定は核戦争後の近未来、ロサンゼルス、2019年!おお、再来年ですね!現実世界の2019年では私達人間はまだ宇宙に移住していないですね。面白い。原作はPhilip K. Dick著の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」と言われていますが、ディストピアの雰囲気としてはジョージ・オーウェル著の「1984年」の影響も感じられます。「SF映画の金字塔」と呼ばれる、名作映画の一つです。
—ストーリー・あらすじ
2019年、惑星移住が可能になった未来。レプリカントと呼ばれる人造人間が謀反を起こし、地球に侵入。レプリカント専門の捜査官“ブレード・ランナー”のデッカードは追跡を開始する。一方、彼は製造元のタイレル社でレイチェルというレプリカントに会い、心を通わせていくが……。
—カルチャーに与えた影響や評価に関して
この映画はファッション関係者、ミュージシャン、そしてビデオゲーム制作者にまで影響を与えました。もちろん映画業界に与えた影響も大きく、リドリー・スコット監督の映像の作り出し方(ミニチュアセットなどを使用しながら映像を作り出す、など)は、後世の映画に影響を与えました。ブレード・ランナーの持つ様式美、スモークやスポットライトやネオンを活用したライティング、影の使い方は後世の映画「A.I.」「ストレンジ・デイズ」などでも模倣されています。詳しくはYoutubeで公開されているViceのインタビューでキャストや撮影クルーが存分に語ってくれていますのでご覧ください。皆さんが熱っぽく語っている様子からも、如何に関わった人達全員が情熱を持ってこの映画を作り上げてきたのかが伝わってきますね。
映画「ブレード・ランナー」の何がそんなに人を惹きつけるのか?
「とりあえず人気がある映画なのは分かったけど、何がそんなに面白いの?前作公開時には、私生まれてなかったんですよね〜。前作すら見ていないから新作の2049を観たいか分からないわ。」というミレニアル世代の人達へ!前作を見たら必ず「ブレード・ランナー2049」まで観たくなりますよ!下記のポイントを読めば、「まずは前作が観てみたい!」と思うはず!
—ただのSF映画だけではなく、普遍的なラブストーリーでもある
まず、あらすじでは「人造人間が謀反」「捜査官が追跡」などアクション映画っぽさが満載ですが、この映画は切ないラブストーリーでもあります。ブレード・ランナー(レプリカントを“処理”する役割を持っている)のデッカードとレプリカント(人工人間で寿命が4年に定められている)であるレイチェルの禁断の恋。そして初めてのキスシーンは名シーンの一つ。「Say, kiss me (キスして、と言え)」この強引な迫り方!レイチェルと一緒にドキドキしてください!私はスペイン人と一緒に見たから「ヒューヒュー!」と茶化しすぎてうるさかったです。笑
–「命について考える」レプリカントであれば人間ではないのか?
この映画のダーク・ヒーロー、反逆者として描かれるレプリカントのリーダー役のロイは常に訴えかけてきます。「レプリカントであれば、人間ではないのか?」ロイを演じたルトガー・ハウワーはレプリカントとしての悲哀を込めた演技で絶賛されました。
この「命とは?人間とは?」の問いかけは、スカーレット・ヨハンソンの実写版映画の記憶がまだ新しい「攻殻機動隊 ゴースト・イン・ザ・シェル」でも描かれてきたテーマですね。「ゴースト(人間性、人格)はどこに宿るのか?」“電脳化”と呼ばれる“身体機能をロボットに置き換えていく”という技術が発達した近未来にて「身体機能のほとんどを機械化して、脳みそだけが自身のもの」である少佐(主人公)は常に「私が私である根拠(ゴースト/精神)はどこにあるのか」と自問します。「自分という存在は何なのか?」この自問は普及のテーマなのかもしれませんね。
—レプリカント(人間ではない存在)も愛を育めるのか?
メインストリームで描かれるデッカードとレイチェルの恋に隠れておりますが、私としてはレプリカントのロイとプリスが何度もキスを交わすシーンが印象的でした。彼らのキスはぎこちなく、まるで「人間らしくあろうとする中で、人間のように他者を愛する行為を真似ている」かのよう。リーダー格のロイがプリスの死を痛んだり、寿命が迫っている彼女から救おうとする姿には胸を打つほどの純粋さが感じられます。「人間ではない」という部分にいて、レプリカントは多大なディスアドバンテージと悲しい宿命を背負うのですが、この儚さ、物悲しさが「ブレード・ランナー」一番の鑑賞ポイントかもしれません。
様々な解釈ができる演出、複数存在するバージョンが味わい深い!
—実はこの映画、5つもバージョンがあると言われております。
劇場公開版とDVD版で内容が変わる、バージョンが複数存在する映画といえば、他にも「ロード・オブ・ザ・リング」や「アバター」などがありますが、「ブレード・ランナー」は5パターンもあるとのことなのでビックリです。
1)リサーチ試写版 1982年 劇場公開前のテスト試写用バージョン
2)オリジナル劇場公開版 1982年 アメリカで一般劇場公開されたバージョン
3)完全版 1982年 ヨーロッパや日本で公開されたインターナショナル劇場公開バージョン
4)ディレクターズ・カット版 1992年 リドリー・スコット監督自ら編集したバージョン
5)ファイナルカット版 公開25周年記念として再度監督が編集したバージョン
私が新作鑑賞前に再度鑑賞したのは4番目ですね。うーん、鑑賞したDVDによって他の人と鑑賞後のコメントが変化する可能性があるのはちょっと困るかも!笑
—ハリソン・フォード演じる、デッカードはレプリカント説!?
突然のように差し込まれる、ユニコーンの白昼夢のシーン。何故デッカードは「ユニコーンの夢」を見たのでしょうか?そして何故、レイチェルを追ってきた刑事は「ユニコーンの折り紙」を廊下に残したのでしょう?
これは「記憶を差し込まれたレプリカントが存在する」という伏線の上に「記憶を差し込まれたレプリカントの記憶は開発側(他者)に把握されている」という事実があります。デッカードのユニコーンの白優夢は彼だけの記憶のはず。その記憶の中に登場するユニコーンのモチーフはサクッと「折り紙で折ってみよう!」と思うレベルの単純なモチーフではありせん。ここから「デッカードの記憶を知っている、つまりデッカードもまたレプリカントではないか?」という説が生まれたようです。面白い解釈ですね!
リドリー・スコット監督の描き方、演出の仕方は伏線が貼りまくりで何度鑑賞しても違った見方ができ、映画好きの好奇心をグイグイ刺激してくれます。
「5つの異なるバージョン」や「デッカードのレプリカント説」に関しては詳しくはこちらのサイトでまとめられていますので、興味がある方はどうぞ。とっても面白い記事でした。
続編で再びハリソン・フォード!あれ、デッカードは2049年にも存在する!?
そうなんですね、今月末公開の続編では映画ファン大興奮のハリソン・フォードがデッカードとしてカムバックしてくるのですよ。いきなり「デッカード生きているやん!(レプリカントの寿命は4年と定められているので)レプリカントじゃなかったんだ!」という説が爆誕しました。そもそも公開されている続編のストーリーが「ライアン・ゴスリングが演じるブレード・ランナーが、失踪した元ブレード・ランナーであるデッカードを探しに行く」という内容なんですよね。しかし!私はまだ「もしかしてデッカードはレプリカントなのでは?(世界の秘密を知ってしまった人なのでは?)」とも思っています。
さすがハリウッド!続編公開に向けてのプロモーション活動が凄すぎる!
続編の「ブレード・ランナー2049」は前作監督のリドリー・スコット監督は「総合製作指揮」という監督ポジションになりまして、実際の映画製作の監督はドュニ・ヴィルヌーヴ氏となっております。また続編公開を前にして彼らが打って出たプロモーション活動がめちゃくちゃ面白いんです!なんと続編のプロモーションの一環で「2019年(前作の舞台設定)と2049年(続編の舞台設定)の間のストーリーをつなぐ短編作品」として 2022年を舞台にしたアニメーション(15分)と 2034年、2048年を舞台にしたショートムービーがYoutube上に無料にて公開されております。すっごい太っ腹!そして再生回数がエグい!最後は予告編とともに、事前に公開されたアニメーションとショートムービーで続編への期待値を上げていきましょう。
日本人アニメーター渡辺信一郎氏製作「2022年Black Outブラック・アウト(停電)」
*日本語版が見つからなかったので英語版です。Sony Pictures Japanのサイトでも日本語訳がついている映像が配信されていないのが不思議です*
2022年では、人間によるレプリカントへの憎悪や反発が更に強まっているようです。反逆者であるレプリカントの彼らは「何故」「この施設」を破壊したのでしょうか?アニメーターの渡辺氏は「サムライチャンプルー(*関係ないですけど、戦闘シーンとジン役の声優さんの渋い声がすごく良いですよ!)」などで知られており、世界で尊敬されるクリエーターの一人です。彼が描いた世界の中でも「トリクシー(レプリカントの少女)とレイ(レプリカントに協力する青年)の恋のシーン」が差し込まれていますね。レイの「レプリカントは純粋で、裏切らない。そして人間よりも人間らしい。」というセリフ。考えさせられますね。
渡辺氏のインタビュー、コメント映像はこちらから。こちらは日本語です。
2049年へ物語が加速していく!「2034年 ネクサス・ドーン(ネクサスの夜明け)」
これはルーク・スコット氏(リドリー・スコット監督の実の息子さん!)が監督したショートムービーです。登場人物はレプリカントを連れている盲目の人物と、レプリカントへの対応を協議する数人のメンバー。彼らの会話から「レプリカントは危険だ。」という意見と「レプリカントは人間がコントロールできる」と意見がぶつかり合っています。2022年を舞台にしたアニメの「ブラック・アウト事件」にも言及していますね。このシーンはどんな意味合いを含んでいるのでしょうか?
「2048年 ノー・ウェア・トュ・ラン(逃げ場はない)」
これもルーク・スコット氏の監督作品です。この映像では「何かが起こった!」という物語の展開というよりも、2049年に繋がるプロローグというような5分間でしたね。少女と母親を救ったこの「男性」は何故身を隠しているのか?何故追われているのか?過去に何をしたのか?2049年にて、この男性がどんな役割を担うのか、とても気になるところです。
さて、事前情報3作品全てを続編公開前にこんなプロモーションをされたら堪らないですね!「こんなプロモーションがあるのか!」とものすごく感激しました。3つのストーリーが、前作との30年間のギャップ、その間の「世界と世論の変化」を匂わし、私達を続編の2049年へ導いてくれます。
ドイツではラッキーなことに日本に先駆けて10月5日に続編が公開されました。もちろん先週キャーキャー!言いながら友人達と見てきましたよ、最高でした!鑑賞前に「ちゃんと2022年、2034年、2048年のショートフィルムをチェックしておくように!」と皆さん事前課題をこなしておりました。やっぱり事前課題はこなしてしておくことをお勧めします。見ているのと見ていないのでは、ストーリーの理解が変わってくると思うので。
次回の記事では私の独断と偏見による勝手な映画レビューを書き散らかしたいと思います。映画鑑賞後にでもお目通しいただければ、と思います。日本公開前、金曜日にアップしちゃいますけどね。若干のネタバレなど気にしない方には鑑賞前に読んでいただくこともオススメです。「注目したい見所」とかが分かるように記述するように心がけています。今週は勝手にブレード・ランナー祭りだ!
他の人に借りられる前にTSUTAYAで早く前作のDVD借りといたほうがいいですよ!ベルリンの図書館では探してもDVDが貸し出し中でしたので。みんな考えることは一緒だな!借りれない人は、amazonさんで購入もありですね!これぞ大人買い!