ベルリンから人生敗者復活戦。

ワーキングホリデーの失敗談を綴る。その失敗の過程と、失敗から出直す、敗者復活戦の過程も勝手に配信する。

ベルリンの「幻の光」映画『Lichter』で知る、最悪スタートアップ企業に買いたたかれている「幸せ」。

ビザの話が続きましたので、今日は映画の話をしたいと思います。まだまだ話題はベルリンの労働環境に関連しますが、ヨーロッパの現状を知る上でとても重要な作品をご紹介致します。

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目次

「ベルリンにさえ辿り着けば、人生が好転するはずだ。」幻の光を追いかけたヨーロッパの最下層の人達を描いた映画。

「Lichter〜幻の光〜」はベルリナーレにも出展された2003年の作品。監督はハンス・クリスティアン・シュミット、日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ドイツではかなり評価された映画だそうです。この映画はたまたま「英語字幕とかが付帯しているDVDを借りるから決意が鈍って結局英語字幕を読んでしまうんだ。最初っからドイツ語音声とドイツ語字幕しか無いDVDを借りて帰ったら、徹底して映画鑑賞中はドイツ語を浴びることが出来るぞ。」との考えのもと、行きつけの図書館から借りてきた映画です。ドイツ映画にあまり馴染みが無かったので、判断基準はひたすらベルリナーレ。(ベルリン国際映画祭の通称)ベルリンベアの紋章が付いているDVDを借りて帰る、とても単純なセレクションでした。

パッケージを読んでもドイツ語が全て理解出来ないし、とりあえずベルリンを舞台にした、ヒューマンドラマ(きっとハッピーエンド)だろう、ぐらいに考えていました。まさかこの映画が、現在スタートアップ企業と戦って戦って「こんなに頑張ってる人って少ないんじゃ。。。」と自己憐憫に浸りそうな私の脳みそをシェイクして、「生言っとんちゃうぞー!」と任侠映画並みに説教をかましてくれる映画だったなんて、その時には予想しておりませんでした。

 

もの凄い映画をもの凄いタイミングで見ちゃいました、『Lichter〜幻の光〜』

この映画は「社長からやっとフリーランス契約のオファーを引き出してやったぜ!」という目下スタートアップ企業と戦っていた八月中旬の金曜日の夜に鑑賞しました。あまりにも映画鑑賞に時間を使えていなかったので、無理矢理週末前に見始めたけれども、時にして深夜2時過ぎ。眠たい思考には難しすぎる映画ではありましたが、映像から、また辛うじて拾える会話や単語からことの深刻さが伝わっていて、最後には「スタートアップ企業に買いたたかれている、そんな現状よりも必死な人達がいるんだ。」と目の前に突きつけられました。なんとなく知っていることと、実感することはやっぱり違うのでしょうね。

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(*ドイツ語の予告編しか見つからなかったですが、雰囲気だけでも。)

この映画はヨーロッパの中でも貧しいとされるウクライナからの違法移民が主人公となっています。違法移民達を手引きするブローカー達にダマされ、「あの街の光がドイツだ。」と言われて車から降ろされてみたら、そこはポーランド。川を渡ってドイツ側に渡ろうとする者、赤ん坊がいる為に渡れない者、渡っても途中で見つかって逮捕される者。経済的に裕福なドイツに行こうとする違法移民達の各々の事情や背景が映し出され、また彼らを助けようと手を差し伸べる人達の人生も映し出されています。

この映画を観ながら、タイトルに付けたように「最悪スタートアップに買いたたかれている『幸せ』」を実感させられました。彼らには辿り着きたくても、辿り着けない所にベルリンがある。私は働きたくて、戦いたくて、そして自ら望んでベルリンにいる。ベルリンに来る段階で、大きな障害はありませんでした。もちろん貯金額や書類などを用意する必要はありましたが、日本人で、書類がキチンと揃っていればワーキングホリデーのビザは2週間で発行されます。「最悪なスタートアップに買いたたかれている」けれども、「買いたたかれる以前に雇われている」そして「ベルリンで生活出来ている」これは幸せだ。どんなに大変な環境に居たとしても、「自分より下を見て安心する」とかいう優越感ではなくて、「自分に与えられている幸運を自覚しながら、精一杯努力する」必要性を感じました。自己憐憫にヒタヒタに浸っていた私に素敵なカウンターパンチをくれた映画です。詳しい内容はここでは省きますので、是非とも鑑賞して頂きたいですね。ベルリンの道端に座り込んで「お腹がすいています。お金を下さい。」と段ボールの切れ端に喋らせて虚ろに煙草を吸っているホームレスや、電車に乗れば毎回でくわす「50セントありませんか?」の物乞い。ベルリンの空気を知りたければ、まずはベルリンにも辿り着けない人達の映画を観て頂くのもいいかもしれない。辿り着いた後もハードだけど、辿り着く以前からハードな人達もいるんです。

 

ウクライナから、ポーランド、そしてドイツを目指す不法移民。目指した先のドイツでも、若者の失業率は高く就職は困難です。

ドイツの現状を少し書きますと、若者の失業率はEUの中では低い方ですが、日本と比べるとドイツの方が高いです。日本の失業率はおよそ6%で、ドイツは7.8%です。(因にギリシャやスペインの若者の失業率は50%を超えているとか。たとえ既にスペイン語を学んでいたとしても、移住先にスペインを選べなかったのは移住後の仕事があまりにもイメージ出来なかったから。実際にこの読みは当たっていたと思います。)何度も記述してきましたが、ベルリンではドイツ人の若者ですら仕事で苦労しているのです。そこに外国人が仕事を探そうと割って入る場合、もちろんのことながら非常に難しい現実が待ち構えています。

*失業率のデータなどはこちらの記事を参考にさせて頂きました。

ヨーロッパの若者の失業率がヤバい!働けない若者が急増中 | セカイコネクト

「サンバ」という、タイトルのポップさに突き落とされる、落差が激しいフランス映画も如何ですか?

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その他にもフランス映画ですが「サンバ」という映画もヨーロッパ圏内の違法移民が生きる世界を知るにはなかなかヘビーな映画があります。サンバ役を演じた俳優オマール・シーが以前出ていた「最強のふたり」という映画、これがお金持ちの男性とその男性を介護する黒人の若者と言う面白いコンビ映画でして、ハートフルで少し泣けちゃう名作でした。この「サンバ」という映画は「最強の二人」と同じ監督(エリック・トレダノ)、同じ主演俳優とのことで、「きっとハートフルで素敵な映画なんだろうな〜」という、ふわっとした気持ちで観ちゃったんです。確かにフランス人女性との淡い恋も交えたストーリーではあるものの、スパイス程度に加えられた恋愛要素も吹き飛ぶぐらいにリアルな描写が続き、すごくヘビーでした。ビザが切れた途端に何が起こるのか。正式なビザの証明書が無い場合にどうやって働いて行くのか。違法なIDの入手の仕方など。正式なビザがない状態で外国に滞在すること、その過酷さと恐ろしさを感じた映画でした。お時間に余裕がある方は、こちらも鑑賞されることをお勧めします。ヨーロッパって、綺麗な建物や芸術もあるけれども、本当に人材が行き来している大陸なので、この2つの映画のようなことが日常として起こっている場所でもあるんです。「日本人だからって優遇されるのはワーホリのビザを取るまでの話。その後の現地での生活は、他の外国人同様にサバイバルである。」と感じさせられました。でも、やっぱり日本人である恩恵は大きいのですけれども。

 

「日本人である」ことが既にスキルである、という幸運

映画を観ながら、多言語話者のジョブフェアに言ったことを思い出しました。ある企業のブースに立ち寄った時、リクルーターさんは沢山の応募者に囲まれていたので、その輪の中から必死に各人が履歴書を渡してアピールをしておりました。私もあまり考えずに、自分をアピールすることで必死だったので「日本市場進出する予定はありますか?」と聞きまくって、「日本語ネイティブです、日本特有のビジネスマナー身に付いています!」と鼻息荒く捲し立てておりました。私の横にいた綺麗なお姉さんは「スロベニアから来ました。ウクライナ語もセルビア語も理解出来ます。英語も得意ですし、ドイツ語も学んでいます。」とアピールしていました。リクルーターさんの正直な反応は「ジャパン!いいわね、ちょうど市場拡大を狙っていたのよ!」と私は興味を持たれ、スロベニアの彼女は「その地域にはまだ進出予定は無いの。」と断られておりました。

「日本市場」って実はヨーロッパからしたら未だに未開の地で冒険なんだと思います。文化的背景も分からなければ「とりあえず気難しくてコミュニケーションが取りにくい人達」だと認識されているので、比較的普通に「日本市場を狙うならば日本人を担当者に置いておきたい」と考えてくれます。でもスロベニアだと「あ〜、じゃあ、ウチの会社のセルビア人に担当させても大丈夫かもしれないな。」とか「とりあえず英語で対応出来るかな?」と、直ぐに「スロベニア市場にいくならスロベニア人の人材確保」の流れにはいかないようです。ここで「日本人であること」それ自体がスキルになっているのだと実感していました。確かに、スタートアップの会社でたとえどんなに買いたたかれたとしても、私はまだ雇われていたし、必要な人材だと思って貰えました。もし私があまり経済市場規模の大きくない国の出身者であったなら、今まで通ってきた道よりも更に険しい道を勝ち抜いて来なければならなかったのかもしれません。この時まざまざと「生まれた国の時点でアドバンテージが付いている」のだと感じました。今まで「英語のネイティブはいいよね〜」と思うこともありましたが、英語ぐらい今は誰でも話せてしまうのです。経済大国の言語(英語以外)がネイティブであることは、その時点で身を助けてくれるスキルなのだと分かりました。哀しいとか悔しいとか申し訳ないとかの感情以前に、これが現実であり、その上での競争社会が築かれているのです。だって、資本主義ってそういうことだから。

 

ポルトガル出身の建築家の卵。「絶対にProbezeit(試用期間)を働き抜いてやる!」

次回は私の話ではなく、実際にヨーロッパにて起こっている「買いたたかれるヨーロッパの若者の現状」について、友人へのインタビューを交えながらご紹介したいと思います。立派な学歴と職歴もありながら、パワハラに近い職場でProbezeit(試用期間)を過ごした彼女。そして現在もなお、安い給与のままで働き続けています。何故、彼女は環境の悪い職場でも耐えて働き続けるのか。何故、彼女は試用期間を超えても「給料交渉をせずに」「買いたたかれること」を選んだのか。実力社会と言われるドイツ、またヨーロッパ全土で起こっている若者の就労問題。EU圏内出身でビザの問題も無い若者であっても、耐え忍んでいる現状をお伝えしたいと思います。

5本後の投稿は、きっときっと素敵でハッピーな内容になることを期待して、今は書き残すべきことをドンドン書き残しておきたいと思います。

全くもって「ベルリン移住」のネガティブキャンペーンがしたいわけではなく、まだあまり書かれていなかった側面に関して実体験をシェアしておきたいだけです。納得のいく判断を下す為には、手元に集める情報には都合が良いことも悪いことも揃っていて欲しいから。誰かの判断材料の一つとなることを願って。そして納得のいく判断を下してもらえますように。

 

 *「幻の光」のDVDが見つけられませんでしたので、ヨーロッパの就職難や立場が弱い外国人の就労問題などに興味がある方は下記の「サンバ」をおオススメします。

サンバ [DVD]

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