ベルリンから人生敗者復活戦。

ワーキングホリデーの失敗談を綴る。その失敗の過程と、失敗から出直す、敗者復活戦の過程も勝手に配信する。

ベルリナーレで映画鑑賞:「La Reina de España」これぞ情熱の国スペイン!下ネタ満載!ドタバタ恋愛コメディと思えば歴史的背景を含んだ深い映画でした。超オススメ!

ベルリナーレで映画鑑賞: スペイン映画La Reina de España

 

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 やっと週末がやってきました!ここ一週間はBerlinale Weekで仕事終わりに映画館に駆け込む毎日を過ごしてきました。体力の無さを気力でカバーしながら毎日映画を楽しむ幸せを噛み締めています。やっと時間が取れたので、ベルリナーレで鑑賞した映画についてジャンジャン書きまくって行きたいと思います!(昨日のLA LA LANDは一ヶ月ぐらい前に書いた記事を未来設定にしていたことをスッカリ忘れていたよ、という投稿でした。)

 

鑑賞前: 予告編とベルリナーレのパンフレットから分かる、大体のストーリーを把握

原題スペイン語:La Reina de España (日本語:スペインの女王)

監督 フェルナンド・トルエバ

主演 ペネロペ・クルス

 時は1950年代、ハリウッドで華々しい成功を収めたスペイン人女優マカレナ・グラナダは、彼女の故郷であるスペインのマドリードに戻って来ます。スペインではカスティージャ王国の女王、イザベラ1世という女王を演じることになったマカレナ。映画製作の現場では懐かしい映画業界の友人達と再会したり、ハンサムなスタッフに惹かれて恋に落ちたり、癖のある監督達と楽しく撮影を続けていくのですが。。。この時代はフランコ独裁政権時代でもあるんですね。そこもポイントとなってストーリーが進んでいくようです。

と、パンフレットの紹介と予告編を見る限り、ドタバタのラブストーリーかつ、スペインの歴史もからんだ群像劇みたいです。ただの映画製作スタッフが大女優のペネロペ・クルスに惚れて貰えるとか!どんだけハンサムだったら合格なんでしょうか。羨ましい展開ですよねー。ベルリン国際映画祭での初鑑賞映画なので、日曜日の夜からワクワクして眠れませんでした。

 

初ベルリナーレ!初プレミア上映!ペネロペ・クルスに会えるのか!?

この映画はベルリナーレでの初上映日のチケットが取れました。つまり今夜はプレミア上映!! 監督や俳優陣が上映前後に舞台挨拶をしてくれる可能性大なのです。友人と「キャ〜!ペネロペに会えるの!!??」と期待に胸を膨らませながらメールを送り合うランチタイム。職場の先輩達も「今日はどの映画見にいくのー?」って私がベルリナーレでワクワクしすぎていたのでわざわざ映画の話題をふってくれます。「もしかしたら半径100m以内でペネロペと同じ空気を吸うかもしれない!」と変態発言をしても「よかったやん!」って受け流してくれる優しい職場です。業務後に「ペネロペがあー!」とテンションマックスになっていた私に友人から一通のメールが届きました。「今日、ペネロペはプレミア欠席するみたい!」流石に先輩も「残念すぎるね!」と笑ってくれましたが、それでも私は期待大です!「ペネロペがダメでもハビエル・カマラが見れたらいい!」彼はペドロ・アドモバル監督映画で何度か見ているので、今回の映画に出演していると分かってからはペネロペの次に是非とも一目見たいと思っていた俳優さんだったのです。(主演のメキシコ俳優ガエル・ガルシア・ベルナウではなく、冒頭に微妙な拍手を貰う、オレンジスカーフの俳優さんがハビエルさん。)

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ハビエル・カマラには会えるのか!?大興奮で向かう会場、煌びやかな世界。

期待値MAXで会場に向かいました。会場はFriedrichstadt Palasttという普段は「THE ONE」などのショーが行われている場所です。ベルリナーレ開催期間だけは特別に映画館使用に変更し、毎日世界中の映画を上映するようになっているとのこと。

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この写真の直前には複数のタクシーで乗り付けている団体を見かけました。映画館から映画館へ駆けつける、映画関係者か相当な映画好きな人々であると思います。

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会場前では上映1時間ほど前にもかかわらず、すでに長蛇の列が。映画のチケットは自由席なので、皆さん、良い席をゲットしようと必死です。

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会場の中では「あ!ニュースで見たことがある!」と思い出す、レッドカーペットとブルーの写真撮影場所がありました。ああ〜、ここで有名な俳優達が監督らとともに写真撮影を行っているのですね。また、映画関係者が到着する前後は一般客にも開放されており、皆さん記念撮影を行っていました。私も友人と一枚撮っておきましたが、ものすごく笑顔の写真が撮れました。だってワクワクしているもの!

 

映画上映前に会場へ映画関係者が入場!プレミア上映ならではの監督らの挨拶が。ハビエルには会えるのか!?

興奮差やらぬなか友人と会場入り。会場の中央部分は「関係者席:予約席」とブロックされており、中央部分以外の席を探すこととなりました。そしてワクワクしながら待つこと30分。映画上映時間の21:00となりました。舞台には司会者が上がり「さあ、監督と製作陣、また出演俳優さん達にお越し頂いております!」と紹介すると、わー!本当に会場に監督さん達が入ってくる!

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残念、今回はハビエルさんはお越しになっていませんでした。でもこの映画でペネロペ並みに主役級の役を努めた俳優のアントニオ・レシネスさんと、この映画でペネロペの恋人役を務めた若手俳優のチノ・ダリンさんが来てくれていました。製作陣ら、映画関係者それぞれが紹介され会場全体が拍手で迎えます。5分ほどの短い時間で紹介を早々におえると、直ぐに映画上映が始まりました。監督や俳優さん達と一緒に映画を見ると思うと、なんだか不思議な気分です。

 

ネタバレあり!主演はペネロペでも、主役はペネロペではない?

この映画『La reina de España』は1950年代、ハリウッドでの華やかな生活に疲れたスペイン人女優マカレナ・グラナダが彼女の故郷であるスペインのマドリードに戻るというお話。映画の冒頭は第二次世界大戦後のスペインやそこから復興を目指す人達の生活、そして1950年代の映画産業の様子が5分ほど映し出されます。ここで一瞬映り込んだ映像で「おおー!ペネロペクルスだー」と思っていたら、その後、冒頭20分ぐらい一切ペネロペは登場しません!ペの字もありません!小太りで禿げたオッさんがひたすら「久しぶりだな。」みたいな感じで旧友に挨拶している感じのシーンが続きます。え?主人公このオッさんなん?って思ってしまうぐらい、ペネロペでない。この映画、確かにペネロペが主演女優かもしれないけれども、映画の主役は全ての俳優であった気がします。最後はやぱりペネロペが一番印象的なんだけども、映画の登場人物全員が濃すぎて全員がいい味出している三谷幸喜映画みたいになっていました。

 

「スペイン映画ってこんな感じよね!」とステレオタイプに楽しんでしまうスペインらしいストーリーと演出。

昔、若い女優のペネロペに溺れてしまったオッさん、国を追われて帰ってきても過去の不義理で信用をなくした妻と家族の元には返れない。息子は立派になり、娘は結婚すると言うのに、「今のあなたは死んだことになっているから」「実際の父親であっても、父親ではない。」と元妻にはブったぎられます。妻には既に支えてくれた別の男がいたのですね。こっそり覗いた娘の結婚式、やっぱり歓迎はされません。

アメリカで成功を収め、恋の噂も沢山流したペネロペ。「なぜアメリカ国籍にかえたのですか?」という記者の質問にはのらりくらりと答えて確信にはふれません。凱旋帰国のようにスペインの映画産業へ、それこそ「スペイン映画界の女王」として帰ってきたのでした。

そんな映画界に突然帰ってきたオッさんを、癖が強い昔の映画仲間達は「死んだと思っていた」と口にしながらも、熱烈なハグで迎えて再会を心から喜びます。もう、ここらへん超スペインって感じ!オッさん、嫁の元には返れないし、仕事も無い。そこで旧友達は便宜をはかってオッさんに映画産業での仕事を与えます。昔、みんな少しづつオッさんにお世話になっているんですね。スペイン人らしい情の深さとでもいうか、口々に文句を言おうとも、心ではみんなオッさんのことを憎からず思っているのです。クズなのに愛されキャラのオッッさん。これが人望ってやつですか!

ペネロペは恋多き女なのでやっぱりまた撮影現場で若いスタッフに目を奪われ、恋しちゃう。そのくせ気が強い女だから自分から惚れたなんて言いたくない。下心まるみえの態度で誘っても、最終的には男に手を出させるようにしむけちゃうのは流石!スペインの女最高だな!って思わせてくれる女優さんです。

そしてペネロペをハマらせちゃう若い俳優さん、筋肉に黒い瞳、セクシーで危なげで本当にホットでした!これは、逸材!イタリア人の友人と「うーん、セクシー!」ときゃーきゃー良いながら見ました。(日本語勉強中のイタリア人が「目の保養だね!」と言った時には私の日本語教育力の高さに自画自賛したくなったよね。教えといて良かった!必須単語だよ!)

この映画、結局は意色々あって窮地に陥ったオッさんを、なんだかんだ言って元嫁も、堕落のキッカケになった元愛人だったペネロペも、そして癖の強い旧友達、皆が協力して助けようとするストーリーなんです。そこで活躍する若い男、唯一オッさんに恩もクソも無いセクシーなペネロペの恋人役の男が、すごい一肌脱いでくれるんですよ。今の女が昔の男の為に頑張りたいからって、無条件で力になってあげるんです。なんだったらオッさん救出作戦で一番大変なポジションをにない、かつ成功の為に一番危ない橋をわたるのもこのお兄さん。今の女が昔に何かあったであろう小汚いオッさんを助けるために、一肌脱ぐなんて懐の広いことが出来るのは、やはり「色恋に理解が深いラテン系」がなせる業かなあと思います。そんなTHE スペイン!赤ワイン持ってきて!な映画でした〜

 

エンターテイメントとして普通に面白い映画でありながら、歴史的背景知識と事前の映画知識あれば更に奥深い、二層、三層にも味わえる映画。

この映画、レズビアンもゲイも、下ネタも下品な言葉遣いもいっぱい出てくるし、笑わせる部分もスゴく多くて「恋愛どたばたコメディー」と括ってしまってもいいぐらいの映画なのに、根底には1950年代のスペインが抱えている歴史背景がくっきり輪郭を作っていて、「なぜオッさんが窮地に陥るのか」「なぜペネロペがアメリカ国籍を取ってきたのか」「なぜペネロペはスペインの女王なのか」すべてがフランコ独裁政権下であった、というこの1950 年代の世界観に答えがあります。そして「この時代のスペインの映画産業が何故にアメリカ資本、人材を積極的に取り入れて行かなければならなかったのか。」そんなポイントに焦点を当てると、笑ってばかりの映画でもないんですよ。

少しだけ歴史的なお話をしますと、予告編でも映り込んでいる巨大な十字架、これはフランコ統治下における「弾圧の象徴」でもあるんですね。スペインの首都マドリードからほど近い街エスコリアルという街にあり、今でも「La cruz de los caidos」(落ちた人々の十字架、caidoは英語でいるfallという単語で「躓いた、転んだ、落ちた」という意味を含んでいます。)と呼ばれています。「スペイン内戦で死んだ兵士達をたたえる」という、この十字架の建設にあたり、何人もの人々も亡くなったり、またフランコ政権時に敵対していた政治犯が、この建設の為の強制労働に従事させられていました。この映画では、ここで働かされることになったオッさんを救い出そう、と皆が翻弄する話でしたが、歴史的背景を知っていると、一気に物事の重大さが身に染みますね。詳しく知りたい人は「スペイン 戦没者の谷」で検索すると色々勉強出来ます。

でもこの映画がひたすらに明るいので、重苦しい雰囲気は結構和らいでいます。だってこの映画はひたすらに人間礼賛、人生讃歌のストーリーですから。そんな背景があったとしても人間は生きて行く、そして恋をしてセックスをして、ケンカしてビンタもする。皆さん、鮮やかな人生だと思いました。ピンチのときでも恋に落ちれるって素敵なバイタリティーだと思います。スペインが更に好きになっちゃうね!これでロシア映画です、とか言われたらちょっと「え?」って咀嚼出来ないけど、「スペイン映画ですから」って言われたら「そうですよねえ!」って言って納得しちゃうパワーがある。スペイン映画いいな!

 

ベルリナーレで映画を鑑賞する醍醐味を、初っ端から感じさせてもらいました。

ベルリナーレの素晴らしいところは観客が一体感をもって鑑賞出来たところでしょうか。スペイン人が真後ろにいて、真横は多分イギリス人で、私の友人はイタリア人でした。皆が一緒に笑ったり、ちょっとそれぞれ爆笑するところが違ったりもしました。国民性と言うか、言葉の問題もあったり。字幕の英語訳が上手だった時はイギリス人が笑って、やはりスペイン語ならではの言葉回しであったらスペイン人が爆笑、それぞれが理解する範囲で最大限楽しんでいたのだと思いました。私は最初はスペイン語と英語とドイツ語のダブル字幕に慌てたけれども、肩の力を抜いて勝手に楽しみだしたらスペイン語の下品で直接的なところがやっぱりいいなーと面白くなりました。映像にも集中出来ると、ああ、ストーリーもいいけども、映像自体もとっても綺麗でステキなんだとわかることができました。

 

スペイン語の侮辱言葉ってなんか愛嬌があるよね〜、そしてスペインのゲイキャラってなんでこんなに可愛いのか?この映画は、下品と愛嬌のバランスが絶妙でした!

久しぶりのスペイン語で慣れなかったけども、だんだん思い出してきて台詞をそのまま聞けるようになってくると「coño,cojo'nes,cabro'n」ってスペイン語のCから始まるダメな言葉ばっかり耳につくんですね。ペネロペも上品そうなオバちゃんも皆、言葉使いが乱暴で汚いんだけど、それがまたシックリきちゃうスペイン映画。人間臭くて、情にあつくて、皆のキャラクターが「ウスターソースに醤油混ぜて豆板醤も入れときました」ってぐらい濃いだけど、すべて調和しているからスゴいです。

やっぱりハビエル・カメラは最高で、今回は別にゲイじゃなかったけどもう可愛かったのは変わらず。アドモバル映画でみた彼が2回ともゲイだったからか、もう彼はゲイ俳優じゃないかと勘違いしちゃう。この映画ゲイが多く出てきたのだけど、彼の他にもアメリカのゲイ俳優とゲイにお尻を狙われちゃうスペイン俳優も出てきました。でも、ハビエルの方が良い。熟年のゲイ紳士も出てくるけど、ハビエルの方が可愛かったです。(どんだけ好きやねん)

 

上映後の舞台挨拶。世界的な俳優さんも間近で見たら案外小さく感じました。映画の効果ってスゴいんですね。そして監督、おじいちゃんなのに表現が若々しくてファンになりました。

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最後に監督や俳優さんをもう一度じっくり鑑賞!前から7列目ぐらいに座っていたので、舞台まで10mないぐらい。こんな間近で世界的な監督と俳優さんをみれるなんて感激!映画の最中で「やばいやばい。フェロモンがヤバいよ〜」とキャーキャー言っていた俳優チノさん、意外とちっさいし、なんかエロくないよ。普通にめっちゃ良い人っぽかったよ。「映画ってスゴいね〜!彼、本当に映画では素敵だったもんね!実物が、すごく害がなさそうでビックリ!」と逆に映画の効果と、俳優さんの演技力に感動しました。挨拶らしい挨拶や質疑応答の時間も無く、なんだったら「顔見せ」程度でしかなかったけれども、わざわざ来て頂いて感激です。そんなこんなで人生初プレミアは大満足でした。なんたったて映画自体がものすごく良かったですから。監督さんに会えるのも素敵だけど、やっぱり大切なのは映画です。映画の出来がこんなに良かったなんて、人生で忘れられないお気に入りの1本になりました。

 

おまけ:この映画は続編だった!?1998年に公開された同監督作品の「美しき虜」のストーリーとキャストが引き継がれています。

じつはこの映画、同監督が約20年前に撮影した映画の続編的意味合いが込められた映画だったみたいなんです。下記サイトにて詳しく説明されていました。

Cuemovieより

「ペネロペ・クルスはヒロインのマカレナ・グラナダを演じますが、このキャラクター名はフェルナンド・トルエバ監督の1998年作品『美しき虜』の時に、ペネロペ・クルスが演じたスペイン女優の名前です。『美しき虜』は、1938年、スペインの映画撮影隊が国の交流の一環としてドイツ・ベルリンのスタジオで映画を撮ることになりますが、それはナチス宣伝相のゲッペルスが主演女優マカレナ・グラナダを自分のものにしようとする策略。マカレナはゲッペルスの誘いをかわしながら撮影は進む…という、コミカルなキューティー映画です。この映画はスペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で作品賞と主演女優賞を獲得しています。」

http://cue.ms/news/la-reina-de-espana-penelope-cruz/

ペネロペの役以外でも『美しき虜』の時に登場したキャラクターが再登場するようですから、『La reina de España』と『美しき虜』は続編とは言えなくても、世界観は繋がっている作品と考えていいようです。気になりますね〜 ベルリナーレが終わったら鑑賞したい映画リストに加えておきました。

 

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